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時を刻む時計に込められた“モノを愛する姿勢”

KOMATSU BARの一角にある柱時計は、かつて千鳥ヶ淵にあったフェヤーモントホテルのロビーに置かれていたものです。

仕事で地方から上京して泊まられた方、フレンチレストラン「スリジェ」でレストランウエディングを挙げられた方、「イングリッシュ バー」でグラスを傾けた方、ティールーム「ブラスリー・ドゥ・ラ・ヴェルデュール」でひとときの語らいをされた方……。
フェヤーモントホテルに足を運ばれたさまざまなお客さまが、待ち合わせや出発の時間を確認するために、この柱時計をご覧になっていました。

この柱時計は、1970年ごろ、フェヤーモントホテルを経営していた小坂武雄が見聞を広めるために渡英したとき購入したもの。アンティーク家具が好きだった彼は、ロンドンでいくつかの骨董市を見て回り、この柱時計に出会いました。

今とは時代も異なり、渡英することはもちろん、購入した柱時計を日本に運ぶことも大変だったようですが、ホテルのロビーに置かれてからも、この柱時計は、多くの人の手間を必要としました。

それは、電気時計やクオーツ時計に比べ、日々のメンテナンスを必要とするものだからです。ゼンマイバネや錘を動力とするこの時計は、放っておくと止まってしまいます。定期的にゼンマイを巻き、ほこりや熱などで錘の動きに誤差が生じないよう丁寧に掃除をし、地震などの大きな揺れがあったときには時計が止まっていないか確認をするなど、ホテルのスタッフの誰かが、絶えずこの時計を気にかけていました。

電気時計やクオーツ時計のみならず、今や電波時計がある時代。手がかかる柱時計を過去に一度も卒業させようと思わなかったといえば嘘になりますが、時を刻むこの時計が人々の手を借り、時を刻み続けていることを思うと、多くの人に見守られてきたからこそ、この時計には、この先もこのままであってほしいという思います。

サービスが商品であるフェヤーモントホテル。モノを売ることを専らとする小売業の小松ストアー。
安いものが売れる、安くなければ売れないという傾向がある昨今、小売業として「モノを売る」とはどういうことなのでしょうか。

「安くしますから買ってください」ではなく、扱う商品の質やデザイン、使い勝手などを確認したうえで欲しいと思ってくださる方がいらっしゃることで初めて値段はその意味を有します。
そう考える私たちにとって、決して安い買い物ではなかった柱時計をKOMATSU BARの一角に置き続けることは、ギンザコマツのモノに対する姿勢を表す象徴のひとつなのかもしれません。


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